M 邸
■植栽
元々この敷地にあった木は、大きめのサザンカとツゲとナンテン、それにツマブキ、ツバキ、アオキなどであった。これに加え、道路側にキンモクセイ7本(1500円*7)及びカクレミノ(3000円)を新規植込みをした。施主が前に住んでいた「本多の家」で育ったケヤキ5本とシラカシ多数を移植した。
7年たった現在(2013)、すごい速度で成長している。
縁台
本多の家の平面図
■建物のアウトライン
小さい敷地の中で最大の空間を得るため、法律上の限度形態(第1種高度斜線制限と道路斜線、建ペイ率40%+容積率80%)にに従っている。斜線制限通りではないのが南に傾斜した屋根だけである。ここは将来発電パネルなどを設置するスペースとして考えている。
■アサカワホーム施工
工務店数社に見積りを出したが、床面積が小さ過ぎ経費等を押えられなかった。かえってハウスメーカーの見積もりが一番安かった。仕様やデザインの融通性が心配だったが、案外そうではなかった事、またハード面のスペックが充実していた。断熱材は約2割増にできた。
■デザイン
限られた予算、狭い土地、厳しい法的制限などの条件の中で最高の解答を得るための意匠的手段として以下のことを考えた。
第一に、最大のボリュームと最小限のパーツ
第二に、できる限りシンプルな生活と道具
第三に、植物を有効に計画に組み込む
第四に、手作り家具の活用
■アルミフレーム
上記の緑化の方法を検討、花窓案、ポット全面取り付け案などを模索したが、アルミフレームを物干しとして利用する実用案となった。夏場はゴーヤが這い上がってくる。一式30万円、施主工事とした。
2016年の夏、ケヤキはその後もズンズンと成長を続けている。ある時、スズメバチが巣を作っていた。直径40センチ近くあった。
その前は鳥が巣を作った。種類はわからなかったが、ビニールひもで組み上げた立派な巣だった。
今年は、カミキリムシの幼虫がそのケヤキの足元の方に穴をあけていた。約1m近く離れた2つの穴はつながっていて、一方に殺虫剤を吹くと他方から出てきた。下が細く上が太い不安定な感じだったのは、幼虫が一生懸命幹に穴を明け養分を吸っていたから?か
ブドウは2016年も豊作、サラダ用のビネガーとなった。黒い粒は甘く茶色っぽいのは酸っぱいのは2015年と同じ。
この家のネコについて、今いるのが立川駅近辺の蕎麦屋の前でノラをやっていたトラ、見かねた前の飼い主が拾い上げ飼おうとしたらしい。去勢し予防接種もして育てる準備をしたが日々のあまりの鳴き声のでかさに閉口、美容院のおばさんの口利きでこの家にやってきた。この家の女主人にだけはめちゃくちゃ愛想がいい。が子供や亭主にはそれほどでもない。特に亭主につめたい。
その前が、立山産のミーというメスネコ、人なつこく気品にあふれたネコだった。90歳まで生き、府中のペット専用のお寺で荼毘に付しお経をあげてもらって昇天した。
2015夏
■施主が前に住んでいた家について
建築概要
所在地
:東京都国分寺市西町(弁天町)
主要用途 :住宅
用途地域 :第一種低層住居専用地域
その他の地区地域 :第1種高度地区 法22条地域
敷地面積 :70u
延床面積 :55.6u(ロフト9.5u含まず)
構造 :木造
階数 :地上2階
構造設計 :古川康人建築構造設計事務所
アルミフレーム製作 :白倉工業
家具製作 :加賀谷幸規
施工 :アサカワホーム小金井支店
竣工 :2006年
トラの用足し用出入り口
トラのバルコニー出入り口
爪とぎ用出隅つけ柱
2016夏
2015秋
■その後のM邸について
上記の本多の家から移植したケヤキやシラカシが奔放に育っている。一昨年たのんだ植木屋さんが
「こんな小さな家にケヤキは止めた方がいい」と忠告していたが、困り果てるまでは続けようと思う。
ことしはブドウが実った。黒く変色した実は甘くおいしい。緑色のものは酸っぱい。すりつぶして
サラダに使った。来年に期待したいと思っている。 (施主談)
施主が「本多の家」と呼んでいる家は、幾多の構造補強や改修を家族自ら行い18年間住んだ借家である。
戦後早々に建てられた平屋の家で、不動産業を営む大家一族の広大な敷地内の隅にあった離れである。欅や桜の巨大が点在する(仕切りのブロック塀を無視すれば)まるで広大な日本庭園の一角に住んでいるようだった。
敷地周辺約1m巾に沿ってシラカシの巨木やツバキ、大きいナンテンがあり、一部が家を包むようにかぶさっていた。
古い家なので当然断熱材などは全く使われていなかったが、これらの木々の衣のおかげですごしやすかった。
大雨の時などはドラムのような雨音が響き渡るし、鳥も虫も来る、風通しがとても良いなど(よく言えば)環境の変化を素直に受け入れる家であった。冬は確かに寒かったが厚着していたと思う。
昔の家なので、壁らしい壁がない。ほとんど開口になっていた。トタン屋根、軒は3.5尺出ている。自立的な内部空間をつくる高断熱高気密住居に比べれば、真逆をゆく家と言えた。
暑さ寒さに耐えられない、冬も薄着で軽快にすごしたいと思う人が大部分であるがゆえに最近の住宅が開発されて来たのである。
結果的に住宅はどんどん閉鎖的かつ内向化していく。(エネルギー対策が主な建前ではあるが)
しかし、この家の生活に我々は慣れた。その「慣れ方」は、季節それぞれに適した過ごし方の工夫のたまものであり、また家族の生活そのものであったと思う。
それぞれの家族がそれぞれ特徴のある生活を営む。それは敷地や道路境界を越えて近隣にあふれだす。楽しい「近所」ができてゆく気がする。
住居の設計にあたっては、家そのものもさることながら、これらの環境の考慮がとても大事であることを教えてもらった家である。
ちなみに、年間のエネルギー消費上も最近の住宅に負けていない。ほとんど冷房を使わないからである。
ところで、この家は、中央部の押入れを廻るように、3畳,4.5畳、6畳の各室が輪状の配置となっていた。行止まりのない感じが実際より空間を大きく感じさせていた。
これをよろこんだのは子供だけではなく、ここに移り住んで6年目に富山からやってきた「ねこ」も ぐるぐるまわって遊んでいた。
生活の場面展開を考えた平面計画的にも動線処理としても参考になった。
■手作り家具
キッチンセットと木製扉及びその枠材などはメーカー品が断然安い。これらはできるだけすっきりした物を選んだ。他の家具類も確かに安いが大きさや素材において調整ができない。
だから作ることにした。家具材は、コスト面から松の外材をDIT系の量販店で購入、組み立ては、最も簡単な作り方として座堀の上ビス止め、座彫り穴をビーズで埋め込んだ。
材料費は塗料を含め3万円程度
ネコ孔
10年前に植えたきんもくせいやケヤキが成長
今年も豊作のブドウ
富山出身のミー、
2010年寅年の年賀状になる、
昨年庭師に剪定してもらった。が、再びジャングル化してきている。